まさに通り一遍の答弁。危機感や責任感を感じさせない点では、菅首相が会見で連発する「仮定の話には答えない」というフレーズにも通じる。

 菅首相に近い自民党関係者の一人はこう証言する。

「菅さんは官房長官時代、情報収集を徹底して水面下で策を弄し、人事を駆使して、政権の安定に貢献した。ただ最後の判断はあくまで別の人だった。ギアチェンジがうまくいかない理由は、官房長官時代の菅氏自身に勝る片腕がいないこと。感染防止策についても、ワクチンについても、厚生労働省などから上がってくる情報に満足できていない。だからこそ、決断を求められる場でも、まるで事務方のような対応に終始してしまう」

 辻元議員とのやりとりでは、五輪の開催を巡ってこんな一幕もあった。

「IOCや組織委員会は国民の命や暮らしを守る責任はないんです。国民の命を守る立場に立てるのは、その中では日本政府なんですよ。総理はIOCがやるかやらないかを決めますとか、組織委員会に任せますと言いますが、違う役割をあなたは持っているんです。ブレーキを考えておくのは日本政府の役割です」(辻元議員)

「安心安全の大会を実現するために具体的な内容を検討してゆく」(菅首相)

 優れた指導者とは、危機にあってこそ輝くものだ。(編集部・中原一歩)

AERA 2021年3月15日号

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