新型コロナ対策に総務官僚の違法接待疑惑。菅首相の対応が後手に回り続けている。「このままじゃ選挙を戦えない」。身内の自民党議員からも悲鳴が上がる。AERA 2021年3月15日号に掲載された記事を紹介する。
【写真】菅首相からの寵愛を受けるも、ついに更迭された総務省の高級官僚はこの人
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突然の入院、そして辞職。もしや二の矢、三の矢の疑惑があるのでは──。永田町ではそう噂されていたが、まさにその通りの展開となった。
菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める「東北新社」による総務省官僚らへの違法接待疑惑で3月1日、1回の食事代が7万4千円と高額だった山田真貴子内閣広報官が辞職願を提出した。女性初の内閣広報官。出世街道をひた走るキャリア官僚のお手本のような経歴の山田氏だったが、最後はあまりにもあっけなかった。与党の国対関係者はこういぶかる。
「急転直下の辞職だったが、菅首相が引導を渡した形跡がない。3月1日には予算委員会が予定されていて、そこで釈明するはずだった。一番驚いたのは菅首相本人ではないか」
山田氏が辞職した3月1日は月曜日。朝から衆議院予算委員会が開催される予定で、山田氏は参考人として国会で説明することが決まっていた。
■「山田隠し」に世論反発
その3日前。菅首相は新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言を6府県で先行解除することを決め、正式な記者会見にのぞむはずだった。しかし官邸は記者会見の延期を決断。その代わり官邸で記者団の質問に答える「ぶら下がり」でこの窮地を乗り切ろうと画策した。
「正式な会見を開けば、広報官としてそれを仕切る山田氏自身に質問が集中する」
背景にそんな懸念があったことは想像に難くない。この時点で菅首相と官邸には、山田氏を更迭した上で、記者会見を行うという選択肢はなかった。しかし、これが裏目に出る。
18分間のぶら下がりは、NHKをはじめ民放各社が速報を打つ騒ぎに拡大。テレビ中継も入ることになる。記者会見をしないことについて、菅首相は「最後まで状況を見極めた上で緊急事態宣言全体について、きちんと会見を行う」とし、首都圏1都3県が解除されていないことを理由に挙げた。