しかし、この言い訳がさらなる不信を生む。菅首相は矢継ぎ早に繰り出される質問に防戦一方となり、半ばキレ気味に対応。最後には「質問は出尽くしているんではないでしょうか。先ほどから同じような質問ばかりだ」と啖呵を切り、ぶら下がりを一方的に打ち切った。

 同じような質問が出るのは、納得できる答えがなかったからだ。官邸が画策した「山田隠し」の結果、週末は「首相の逆ギレ会見」報道一色となる。

■寵愛官僚に相次ぐ疑惑

 この「逆ギレ会見」は、来る解散総選挙を前に週末、地元に戻っていた自民党の国会議員を直撃した。自民党の中堅議員の一人は電話インタビューにこう答えた。

「国民に自粛や負担をお願いしている政府が、このざま。誰が見ても、あの会見が『山田隠し』であることは明白だった。それを追及されたくないために、国民への説明責任を拒否したと受け取られた。これまでも水面下では『菅総理では選挙は戦えないのではないか』という声はありましたが、それが表沙汰になったのは、これが初めてではないでしょうか」

 自民党本部に寄せられる各地からのクレーム。ようやく菅首相は日曜日の夜になって、再度、山田氏の人事を側近と話し合う。月曜日に予定されていた予算委員会には、立憲民主党の枝野幸男代表、辻元清美議員ら野党の論客が質問に立つ予定で、山田氏を続投させれば、さらに事態は悪化する。

 当初、菅首相は21年度予算が成立した時点で、山田氏を別の理由をつけて異動させることを考えていた。だが、それを早める必要があると判断。しかし、その矢先に山田氏本人から「辞職」という話があがり、何の準備もしていなかった官邸は混乱の朝を迎える。

 なぜ、突然。その答えとして浮上したのが、冒頭の疑念だった。そしてその疑念は、3日、現実のものとなる。

 この日、山田氏が東北新社だけではなく、NTTからも違法と疑われる接待を受けていたと週刊文春(電子版)がスクープする。山田氏だけではない。東北新社の件で減給の懲戒処分を受けた谷脇康彦・総務省総務審議官の名前もあった(8日に事実上の更迭が決定)。その額は東北新社をはるかに超える50万円以上だったという。

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