「今の状態ではよくない。きちんと取り出し管理できる状態に持っていけるように取り組むことが大切だ」

 逆に、燃料デブリを取り出せたとしたら、いつまで原発敷地内に置いておくのか。小野氏が続ける。

「処分方法はまだ明確には決まっていないので、燃料デブリの性質を取り出した後に調べ上げ、どんな形での処理や処分がいいかを事業者が中心になって考えていかなければいけない」

 小野氏は、この10年間で敷地の96%のエリアで防護服が不要になるなど現場の作業環境はかなり改善された、「計画的」かつ「戦略的」に廃炉を進める環境が整ってきたと強調する。

 だがしかし、廃炉の姿が不明確なまま作業を続けるのは、ゴールがわからないまま走り続けるようなものだ。しかも残された年月は20~30年。トラブルが続き多くの作業がずれ込む中、目標の厳しさは明らか。それがなぜ可能なのか。最後にこの質問をぶつけると、

「国内外での様々な技術や英知、これらをうまく活用することによって達成できると信じていますし、今後しっかりとやっていきたい」

 と述べるにとどまった。

 海外の廃炉事情に詳しい尾松さんによれば、事故炉の廃炉は「最終形」をあらかじめ設定するのが重要というのが国際的な認識だという。

 東電が「廃炉」の見本にした、1979年に起きたスリーマイル島原発の事故では、実は安全重視で原子炉解体に着手せず、事故から「40年後」を迎えた。今後、他の原発同様に原子炉解体・更地化を目指すことになる。86年に福島第一原発と同じ「レベル7」のチェルノブイリ原発事故を起こした旧ソ連ウクライナでは、事故から12年後の98年、議会が「チェルノブイリ廃炉法」を制定。廃炉を「燃料デブリを取り出し安全保管するまで」と定義し、作業員の安全保護、必要な予算編成義務なども定めた。廃炉実施には国営企業が責任を負っているという。

「チェルノブイリ廃炉法制定の前に、まず国際世論の高まりがありました。爆発が起きた4号機を覆う石棺をそのまま放置し火災でも起きたら再び大惨事になりかねない。そこでEUやG7の要請もあり新安全シェルターを建設する計画が始まり、16年に設置します。でもシェルターを被せて終わりではウクライナ国民は納得せず、議会で『将来のデブリ取り出し』を義務づける廃炉法が制定されたのです」(尾松さん)

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