避難者は10年前に、車を降りた時「ここで息していいの?」と言い合って、平均で6~7回も避難場所を転々としてきたので、精神状態は極限に追い込まれてきた。多くの高齢者は避難中に半身麻痺(まひ)になって歩けなくなり、時には死にたいと思うこともあり、自ら命を絶つ事件が続発する。この人たちが生きてきたことが不思議なくらいだ。1年前の2020年3月、警察庁がまとめた東日本大震災の死者は1万5899人・行方不明2529人だったが、思い返すと、まだ助けられた津波被害者を、放射能のために後ろ髪をひかれる思いで残してきたことは、悔やんでも悔やみ切れない、と言っている。震災関連死(昨年12月25日発表値)は岩手469人/宮城929人/福島2313人で福島が断トツだ。震災関連死というよりも明らかに原発関連死である。実際は3000人を超えている。地震津波だけではなく、原発事故が起こったからこうなった。
福島第一原発の汚染水はどんどん増え続けるので、国は海に流すことだけを考えているが、この汚染水の主成分トリチウムは、セシウムの放射能より質が悪くて、遺伝子の水素を消してゆくから、おそろしいことに、子供に伝える親の遺伝子DNAがバラバラになって、子供たちに重大な障害を起こす。それを風評被害と呼ぶのは科学的に間違いだ。
汚染土を公共事業で再利用する計画を目論(もくろ)んでいるのが環境省だ。安倍晋三内閣以来、菅義偉内閣でも環境大臣は小泉進次郎で、この男が全国へ放射性物質をバラまくのだ。全国の道路や防潮堤などの建設資材として再利用しようとしている。
われわれ日本人は内心で、いつまた同様の巨大事故が起きるかもしれないという、大きな不安を抱いている。何しろ2016年4月の熊本地震で最強の震度7を観測し、2018年の北海道胆振(いぶり)東部地震でも最強の震度7を観測し、日本列島の全原発と六ケ所再処理工場、東海再処理工場が、放射能のかたまりである行き場のない大量の使用済み核燃料を、不安定なプールに抱えているからだ。いつどこで大地震による大事故が起こってもおかしくない。なぜ、即刻、全原発を廃炉にして、完全な対策を講じないのだ。この愚かな国民は、いつまでこのような政治家を信頼して命を預けているのだ。愚かと言われたくなければ、頭を使えよ!
※週刊朝日 2021年3月19日号