大泉:監督は自分より年上の役者さんの演技に指示を出しにくい、とかあります?
吉田:どちらかというと年下のほうが怖いかな。自分より若い人が「ん?」となっていると「なんかずれてるのかな?」ってものすごーく動揺する。「桐島」のときはヤバかったですよ。キャストがほぼ10代とかだから。本当に具合悪くなるくらいだった。
松岡:たしかに「監督がどんどんやせていく!」ってみんな心配していました。
吉田:松岡さんは今回、先輩俳優とも仲良くなっていたよね。
大泉:松岡さんは「おじさん転がし」めちゃくちゃうまいですから。みんなイチコロですよ。
松岡:聞こえが悪いですって!(笑)。愛嬌がある、とか言ってください。
吉田:今回の映画では「紙の本」の持つ力も実感しました。ロケで本屋に長くいるだけでみんな妙に興奮してくるんだよね。
大泉・松岡:なるなる。
吉田:本には一冊一冊にむき出しの「面白さ」がこめられている。そんな到底消化しきれないほどのご馳走が並んでいる場所が本屋なんだなと。あの興奮は映画館ともまた違うし、電子書籍では味わえない。
大泉:コロナ禍で本が更に売れたといいますしね。
吉田:なくしてはならない文化だと改めて思いました。
(フリーランス記者・中村千晶)
吉田大八(よしだ・だいはち)/1963年、鹿児島県出身。主な監督作品に映画「桐島、部活やめるってよ」(2012年)、「紙の月」(14年)、「羊の木」(18年)など
大泉洋(おおいずみ・よう)/1973年、北海道出身。映画「グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」「新解釈・三國志」(2020年)など、出演作多数
松岡茉優(まつおか・まゆ)/1995年、東京都生まれ。映画「勝手にふるえてろ」(2017年)、「万引き家族」(18年)、「蜜蜂と遠雷」「ひとよ」(19年)、「劇場」(20年)など
※AERA 2021年3月22日号