吉田:二人ともたぶん普通の俳優さんより「見えちゃう」人だと思う。それゆえに簡単にはものごとを信用しないし、納得がいかないのにわかったふりはしない。そういう疑り深さが僕は好きなんです。作品そのものに対して誠実だと感じる。

大泉:松岡さんは本当に精度の高い俳優さんだなあ、という印象です。落ち着いているというか。「私、失敗しないんです」って言ってましたよね。

松岡:某ドラマじゃないんですから。言ってませんって(笑)。

——社内での派閥争いやリーク、裏切り──二転三転する騙し合いバトルのなか、新人作家発掘の様子や出版不況の実態など、出版業界の裏側も描かれる。

吉田:舞台は出版業界だけれど、僕らも映画を作る立場として近いものを感じています。

大泉:速水という男は「おもしろいもの」を求めることに貪欲で、素直な人なんですよ。僕はそこまでできないし、その大胆さがいいなあと思いながら演じました。

吉田:コロナ禍で、出版も映像も業界全体が切迫した状況にある。毎日、問われている気がしますからね。「これから何をやるの?」と。そのなかで「おもしろいこと」を追い求める速水や、そのカウンターとして高野の出した答えが、いまこそ観る人に強く伝わるんじゃないかな。

松岡:私は新人賞に応募してきた人たちの作品を読むシーンで、スタッフさんが用意してくださった応募作のダミーを見ながら「これって俳優と同じだな」と感じたんです。

大泉・吉田:ほう。

松岡:原稿の綴じ方やサイズもそれぞれで、なかには崩れやすいものもある。でも崩れたものは、もう読む気がしなくなっちゃう。多くのなかから選ばれるためには芝居のうまさだけじゃなく、見た目や提供の仕方も大事。その状態にきちんと自分を整える必要があるんだな、と。

吉田:そこまで感じてたんだ。すごい。

——二人の他にも、佐藤浩市、小林聡美、リリー・フランキー、塚本晋也ら個性的な俳優が集結し、作品を盛り上げる。

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