監督 クリスティアン・ペッツォルト/26日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開/90分(c)SCHRAMM FILM/LES FILMS DU LOSANGE/ZDF/ARTE/ARTE France Cinema 2020
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 三島由紀夫やチャイコフスキーなど数々のクリエーターにインスピレーションを与え、オードリー・ヘプバーンも舞台で演じた水の精ウンディーネ(オンディーヌ)の物語。本作「水を抱く女」は舞台を現代に置き換えて映画化した。監督は傑作「東ベルリンから来た女」のペッツォルト。

【映画「水を抱く女」の場面カットはこちら】

 現代のベルリン。都市開発を研究する歴史家であるウンディーネ(パウラ・ベーア)は、アレクサンダー広場に隣接する小さなアパートで暮らし、博物館でガイドとして働いている。ある日、恋人のヨハネス(ヤコブ・マッチェンツ)から別の女性に心移りしたと告白され、悲嘆にくれていたウンディーネの前に、愛情深い潜水作業員のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)が現れる。

 数奇な運命に導かれるように激しく惹かれ合うふたり。しかし、次第にクリストフはウンディーネが何かから逃れようとしているような違和感を覚え始める。やがてクリストフに事件が起きる。そのとき、彼女は自らの宿命に直面しなければならなかった──。

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
近年珍しい大人の愛の映画。舞台を現代のベルリンに移して繰り広げられるギリシア神話の精霊の愛の世界はロマンティックで少々不気味。今の男の肩越しに彼女を捨てた前の男を見ながらすれ違うシーンの女の目が怖い。

■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
ベルリンという都市の成り立ちや分断の歴史、再開発と水の精の神話が、現代を生きる男女のドラマと絡み合い、想像をかき立てる。ドイツの歴史や政治を独自の視点で掘り下げてきた異才ならではの洞察に満ちた愛の物語。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
恋をすると考えすぎたり、複雑な感情がいろいろ生まれます。これは切なくも美しく、そして悲しくも怖くなります。でも優しさも感じます。つまり神話のテイストを残したままです。しばらく取り憑かれる不思議な一本。

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
少しでも匙加減を間違えたら映画が成立しなくなるリスキーさに挑んだ監督の度量が素晴らしい。主演2人が醸し出す相性は稀に見るクオリティーの高さで、登場人物が少ない今作を支えている。90分ながら上質で濃密。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2021年3月26日号