女優の天海祐希(45)が軽度の心筋梗塞(こうそく)で都内の病院に入院したのは、6日のこと。東京芸術劇場での舞台「おのれナポレオン」に出演していたが、8日には降板が発表された。
「6日の14時からの公演では、天海さんは最後まで通常どおり務めていました。観客で天海さんの体調が悪いと感じた人はいないと思います」(劇場広報担当者)
所属事務所によると、天海は終演後、「体がダルい」と訴え、自力で歩いてマネジャーの車で病院へ向かった。自覚症状はなく、その間も、いつもと変わった様子はなかったという。「1週間から10日の安静治療を要する」と診断されてそのまま入院。投薬治療を行うという。
なぜスリムで健康な40代の女性が、急に病に襲われたのか――。
心筋梗塞とは、心臓に栄養を送る冠動脈が詰まり、心臓の筋肉の一部が壊死(えし)する病気だ。死に至るケースもある。その原因とされる動脈硬化は高血圧、糖尿病、高コレステロール血症が「3大因子」で、メタボの人に多いと言われている。要するに心筋梗塞は、生活習慣病から導かれる最悪のケースとも言える。
これまでに心筋梗塞になった有名人を思い起こすと、アナウンサーの徳光和夫氏や俳優の西田敏行、タレントの松村邦洋など、やはり「ぽっちゃり」が目立つ。そうなると、天海が心筋梗塞とはピンとこない。国立循環器病研究センター病院心臓血管内科の安田聡部門長は、こう話す。「40代でやせ形の女性が心筋梗塞になるのはまれです。そもそも女性ホルモンには血管を拡張する作用があるため、男性より心筋梗塞にかかりにくいのです」。
男性の患者数は女性の3倍とされている。では、やせていて健康的な人が心筋梗塞になるのはどういうケースだろうか。「血管がけいれんを起こして血液が流れなくなり、心筋梗塞になるパターンですね。閉経前後で女性ホルモンが減る45~55歳の女性や、血管が収縮しやすい喫煙者に多い。ストレスも一因だと言われています」(同)。
心筋梗塞の前兆は、胸を圧迫するような5~10分間の痛みが繰り返す。症状が重くなると、痛む時間が長くなったり、痛みの程度が強くなったりする。重症の場合はいかに早く治療できるかという時間との勝負になるが、早期に発見できれば入院することなく、投薬やカテーテルで治せる病気でもあるのだ。
天海のように自覚症状がない場合、予防策はあるのだろうか。東京ハートセンターの南淵明宏センター長は、「規則正しい生活や適度な運動は、すべての病気を遠ざけると言われています」と話したうえで、ひとつの「特効薬」を紹介する。
「40代になったら、冠動脈CT(64列マルチスライスCT)の検査をお勧めします。臓器によって病気の進行速度は違います。胃は1年、大腸は3年に一度の検査をしたほうがいいと言われていますが、動脈硬化は5~10年かけてできるため、10年に一度で大丈夫なんです」
冠動脈CTは日帰りで受診でき、費用は保険診療なら2万円以下、ドックでも5万~10万円が一般的。これで大病を回避できたら、安いものだ。
※週刊朝日 2013年5月24日号