週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「子宮・卵巣がん手術」の解説を紹介する。
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女性特有の臓器である子宮と卵巣には、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんが発生する。1年間の患者数は、子宮体がんが約1万7000人、子宮頸がん約1万1000人、卵巣がん約1万3000人と、乳がんや大腸がんに比べて少ないものの、注意すべき疾患である。
子宮体がんは閉経前後の年代に、子宮頸がんは20代後半から40代、卵巣がんは50代、60代に多い。子宮体がんや子宮頸がんは不正出血などの自覚症状があらわれやすく、初期に気づきやすいが、卵巣がんは症状がほとんどなく、進行してからみつかるケースがほとんどだ。
また、若い世代では、妊孕性(妊娠する能力)に影響を及ぼし、深刻な状況になることが少なくない。
いずれも手術が治療の第一選択となる場合が多い。従来からの開腹手術のほかに、子宮体がんでは腹腔鏡やロボットによる手術、子宮頸がんでは腹腔鏡による手術が実施されている。子宮も卵巣も、骨盤内という狭い空間にあって膀胱や直腸、血管や神経などと近接しているため、手術には熟練の技術が求められる。手術の合併症として、リンパ浮腫(むくみ)や排尿のトラブルなどがあらわれやすいが、これらを回避する工夫も普及し始めている。
また、進行した例や、高齢で手術ができないようなケースには、抗がん剤などの薬物療法を中心に治療が進められる。
いずれも早い段階で発見するためには、1~2年に1回の婦人科検診を受けることが大切だ。
子宮体がんの約8割以上を占めるのは、「タイプ1」と呼ばれるものだ。初期(IA期)に診断がつけば、完治率は高い。