慢性の難聴でも、中耳炎や耳硬化症、聴神経腫瘍など病気が原因で起こるものもあり、病気を治療することで難聴が改善することもある。東京慈恵会医科大学病院の小島博己医師はこう話す。
「まずは難聴の原因を特定し、治療できる病気を鑑別することが大切です。聞こえが悪く不便を感じている場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう」
加齢性難聴と診断された場合や治療しても改善しない場合などには、補聴器の装用を検討する。日本耳鼻咽喉科学会では、聞こえの悪さを感じた場合、難聴や補聴器に関する専門医である「補聴器相談医」のいる耳鼻咽喉科への受診をすすめている。
■補聴器は適切な調整と訓練で使えるようになる
一般的に、聴力が40以上になると軽度難聴として補聴器がすすめられる。慶応義塾大学病院の大石直樹医師はこう話す。
「音や言葉の聞き取り検査をし、日常生活でどのように困っているかなども確認した上で補聴器をおすすめしますが、聞こえないことの不便さより、補聴器をつけることの煩わしさのほうが大きい場合などは装用しない人もいます」(大石医師)
その場合は様子を見ていき、症状の進行に伴い装用を希望することもあるという。
補聴器は、眼鏡のように「つければすぐ使える」というものではない。その人の聴力に合わせて調整し、補聴器による聞こえに脳を慣らすための訓練が必要だ。個人差はあるが、3カ月程度使い続けることで快適に聞こえを補えるようになることが多い。加齢性難聴は進行するため、装用後も定期的に聴力検査や機器のメンテナンスをし、聴力の低下に応じて補聴器を調整し直すことが必要だ。
加齢により増える耳の悩みには「耳鳴り」もあり、難聴の人の7割が耳鳴りの症状を有するといわれる。耳鳴りは難聴が原因で起こることが多く、補聴器を装用することで耳鳴りが軽減・改善されることもある。耳鳴りの治療では、専用の機器を使う「音響療法」や、耳鳴りを理解することで苦痛を軽減する「教育的カウンセリング」なども有効とされている。