帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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※写真はイメージです (GettyImages)
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは『益軒養生訓新説』。

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【天の恵み】ポイント
(1)荻原井泉水が83歳から書いた『養生訓』解説がいい
(2)酒を味わうには九つの順序があると紹介している
(3)天を楽しみ、たえず生長していなければならない

 荻原井泉水(1884~1976)という俳人をご存じでしょうか。俳句雑誌「層雲」を主宰し、そこから尾崎放哉や種田山頭火が輩出したというのですから、たいしたものです。しかし、今回、彼を紹介するのは、俳句ではなくて、貝原益軒『養生訓』の解説についてです。荻原井泉水は83歳から『益軒養生訓新説』という原稿を書き始め、雑誌に連載しました。これがなかなかいいんですね。

 私も本誌で養生訓についての連載をさせていただき、『貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意』(朝日新聞出版)という本を出版しましたが、本になった『益軒養生訓新説』(大法輪閣)を読むと改めて感銘を受けます。

 益軒の養生訓では「酒は天の美禄なり」と飲酒を勧めていますが、それを受けて、井泉水は酒について語っています。相当な飲み手だったようで、「少年のころ、青年のころにはずいぶん大酒をした」が40代のころになって、酒は味わって飲むべきものではないかと痛感したといいます。若山牧水の歌にある「しらたまの歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ」という気持ちになったというのです。そして昔の本にあった酒を味わう九つの順序を紹介しています。

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