これらのマイナス要素を一気に払拭(ふっしょく)するために解散する。シナリオはこうだ。来年度予算成立後、日米首脳会談のため訪米。4月8日告示の補欠選挙に合わせて解散し、4月25日投開票。もしくは、投票所の確保などの選挙準備を名目にして、補欠選挙も合わせて公(告)示、投票日を後ろに倒す「5月選挙」という選択肢もある。しかし、この「4月解散」は政治日程を考えても、あまりに日数がなく現実的ではない。菅首相本人もこのウワサを否定している。

 もう一つ考えられるのは6月25日告示、7月4日投開票の「東京都議会議員選挙」とのダブル選挙。ただ公明党が反対なので、これは難しい。そうなると、今のところ最も現実味があるのは、どんな形でもいいので東京オリンピック(7月23日~8月8日)、東京パラリンピック(8月24日~9月5日)をやり遂げ、その記憶が覚めやらぬうちの「オリンピック解散」。ただ9月30日が自民党総裁の任期、10月21日が衆議院議員の任期なので、事実上の「追い込まれ解散」であることには変わりない。

■じわじわと効く不祥事

 菅政権の命運を握っているのは「ワクチン」と「オリンピック」だ。ただ、ワクチンについては「オリンピック開催の前提にしない」「来年2月までの接種」をすでに菅政権は公表している。ワクチン接種は遅れるのが前提。菅首相としては選挙の争点にしたくないのだろう。重要なのは「感染者数」だ。ただ、その展望は極めて厳しい。実際「緊急事態宣言は解除したものの、感染者数を劇的に抑える秘策はない。あれば、すでに手を打ってる」とある官邸関係者は嘆く。国内の感染者数は、そのまま五輪成功の成否に直結する。感染者数の推移を考えても、早いうちに解散したほうが傷は浅いと主張する人もいる。

 国内状況を分析すると「与党不利」に見えるが、必ずしも「野党有利」ではない。政党別の支持率も劇的な変化はない。ただ、ある野党幹部はコロナ以上に自民党のある不祥事がボディーブローのように効いていると語る。

「森喜朗元首相の女性差別発言ですよ。ああいう嫌な上司っているよねって、誰でも自分の生活圏に思い当たる人がいる。安倍前首相の国家主義的なイデオロギーの好き嫌いではなく、あの周回遅れの陰湿な体質が生理的・身体的に嫌いと言う人が増えました。あの発言そのものが分かりやすい自民党の体質だと有権者は見抜いているのです」

 いずれにしても、4月25日に投開票される補欠・再選挙の結果がこの半年の政局を左右することは間違いない。(編集部・中原一歩)

AERA 2021年4月5日号より抜粋

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