河井元法相による選挙買収事件や総務省幹部らへの接待問題──。相次ぐスキャンダルに加え、衆院議員の任期満了も迫る。AERA 2021年4月5日号は、政治日程をにらみ、菅政権の行方を考えた。
* * *
衆議院議員の任期があと半年と迫る中、「いつ菅総理が解散に打って出るのか」は、迎え撃つ野党だけでなく、身内の与党にとっても最大の関心事だ。実は、つい最近も、この4月の補欠選挙にぶつけて解散する「4月解散」説がまことしやかに流れた。名付けて「菅息子隠し解散」。一連の東北新社による総務省幹部への接待問題。そして、東北新社が放送法の外資規制に違反していた問題。野党は、この二つの疑惑に菅首相の長男である菅正剛氏の関わりを追及。場合によっては正剛氏の参考人招致も辞さない構えだ。もちろん、息子の件について菅首相は「成人した長男と自身の政治活動は全く関係のない別人格」と弁明するも、そうかと思えば週刊文春(4月1日号)は、正剛氏が筆頭株主の会社から、長年にわたって多額の政治献金を受けていると報じた。その上、すでに接待問題に関連し、首相本人が寵愛(ちょうあい)していた2人の官僚(山田真貴子・前内閣広報官、谷脇康彦・前総務審議官)を菅首相は失っている。
菅首相は周辺に「息子の件で追及されるのは不本意だ」と漏らしているようだが、ダメージの本丸は、問題の構造が「安倍前首相と昭恵夫人」の関係に似ていて、どうしても前政権を彷彿(ほうふつ)とさせてしまう点だ。菅首相に近い自民党中堅議員は言う。
「何をやっても家族、身内であれば許される。それがバレても国民に謝罪はおろか説明もしない、という態度は、あの『モリ・カケ』騒動を思い出してしまう。いい具合で『脱安倍』に舵を切れたのに、このまま放置すれば同じ穴の狢(むじな)だと思われてしまう」
菅首相にとって分が悪いのは、通常国会の会期終了(6月16日)まであと2カ月強あるということだ。外資規制違反の問題は、東北新社側は「総務省に規制違反の事実を報告した」と言い、総務省側は「報告を受けた記憶がない」と両者の言い分は分かれている。毎週のように新たな事実も発覚。面談記録も「総務省側のメモはない」などとはぐらかし、これも、モリ・カケ・桜と同じく「改ざん、隠蔽」疑惑が囁かれている。これに加えて、野党が息子の参考人招致を要求してきたら……。