のどの炎症が、じんましんや頭痛など、思わぬ症状を引き起こすことがある。なぜ、のどが全身に影響を及ぼすのだろうか。治療法や炎症リスクなども紹介する。
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「朝起きたら体が鉛のように重くなっていて。腰も痛く、はってトイレに行ったら、真っ黒なおしっこが出たんです」
と、自らの経験を話すのは、関東地方在住の森本美穂さん(47)。体調の異変が表れたのは、12年ほど前。2人目の子どもを出産した直後だった。
近所の泌尿器科で診てもらうと、尿から血液(尿潜血)とたんぱくが確認された。だが全身には大きな問題は見つからず、「膀胱(ぼうこう)がんではないので、様子を見ましょう」と言われただけだった。
その後、体の異常は尿や腰だけでなく、頭痛や関節痛、じんましん、動悸(どうき)などとしても表れ、それらがよくなったり、悪くなったりを繰り返すように。森本さんは内科や脳神経外科、精神科などさまざまな診療科を受診したものの、原因はわからないままだった。
そんな状態が長く続いていたが、約2年前、インターネットで、さまざまな全身の病気が「“のど”の炎症から始まる」との視点で診療している腎臓内科医の堀田修医師を知り、すぐに仙台市にある堀田修クリニックへ。そこで診断されたのは、IgA腎症という腎臓病の一種だった。
「病名がついたことが何よりうれしかった。ゴールしたような気持ちになりました」(森本さん)
森本さんは同院で治療を受け、今も定期的に診てもらっている。症状はかなり軽快し、最後まで残っていた重度の疲れは、日中に横にならなくてすむところまで回復した。
堀田医師が、のどと全身の病気との関係に気付いたきっかけは、IgA腎症だった。
「IgA腎症は、血尿やたんぱく尿が主な症状で、進行すると腎不全に陥ります。実は、この病気の発症や悪化の原因となるのが、風邪(上気道炎)や扁桃炎(へんとうえん)など、のどの感染だったのです」(堀田医師)