5月14日、飯島勲・内閣官房参与が北朝鮮を訪問。本人は大歓迎を受けたが、政権の主人公は大恥をかかされたに等しい。

「誠実な親北人士」と激賞された飯島氏。日本担当の実務担当者ら北朝鮮幹部が次々会談。肩書ほど権力がなく「来客用のお飾り元首」ともいわれる金永南(キムヨンナム)・最高人民会議常任委員長は、「(日朝関係に)長年誠意を傾け、努力を重ねてこられたのはよく知っている。高く評価している」と持ち上げた。

 が、飯島氏を送り出した安倍晋三政権側は、平静を装うものの、周辺の口は重い。

「北は飯島氏を抱き込むつもりではないか」
「まんまと北にやられた…」

 というのも、「飯島訪朝」を北朝鮮が到着当日に公表、テレビや新聞で大宣伝するとは誰も想定しなかったのだ。秘密交渉どころか北のプロパガンダ奇襲に利用されたのである。

 ある政界関係者の話。

「飯島氏の訪朝は、個人の資格に近いものだったと聞く。安倍総理はOKしたが『向こうとは何も約束しないよう』念を押したそうだ。まさか到着のその日に北にバラされるとは。総理とすれば憮然たる思いだろう」

 飯島氏の訪朝は米国のデービース北朝鮮政策特別代表の韓国、中国、日本歴訪と重なった。日韓とは北の核ミサイル問題で「北が非核化の具体的措置を取らない限り北と対話をしない」連携を固めるのが目的。それに合わせて北は「飯島訪朝」をバラして見せたのだ。4月に来日したケリー米国務長官に「北朝鮮との安易な対話は騙されるだけ」とクギを刺したのは安倍首相その人だ。北朝鮮は「対北強硬派」の首相に満座の中で意図的に大恥をかかせたのである。

AERA 2013年5月27日号