林:私も行きたいなと思ったけど、ちょっと無理かもしれない……。
橋田:私は旅がしたくてお金をためてたようなもんですから。
林:お金を使うのは船旅とお手伝いさん代ですか。
橋田:お手伝いさん費に月70万ぐらいかかるんですよ、残業つけると。年をとったらそういう暮らしがしたくて。それに昔は仕事仕事で、お金を使う暇がなかったからたまっちゃったんです。
林:ご主人(元TBSプロデューサー岩崎嘉一氏)が財団(橋田文化財団)のためにお金を全部とっておいてくれたんですよね。すごくいいご主人ですね。
橋田:そうですか? 亭主が死んでから、株券を売ったら2億8千万円あって、これでしばらく遊んだり旅行に行こうと思ってたんです。だけど亭主は私より四つ若いから、自分のほうが長生きすると思ってたらしくて、私が死んだら財団をつくるつもりだったんですね。「そのためにお金をためてたんだから、使ったら化けて出るわよ」って石井ふく子さん(プロデューサー)に言われて、じゃあ財団をつくろうと思ったら、財団をつくるのには資金が3億円いるというんです。
林:ひぇ~! お金、足りないですよね。
橋田:そう。それでしょうがないから「渡る世間は鬼ばかり」を書いたんです。1年で終わるつもりだったら、それが今まで続いたんですけど、それも「書き続けろ」という主人の遺志かなと思って。そういうわけで、亭主が死んだとき私は無一文だったんです。
林:まあ、そうだったんですか。
橋田:「橋田賞」(放送文化に貢献した番組や人物に与えられる賞)の賞金を出したりパーティーをしたりするので、利息と原稿料ではやっていけないんですね。しょうがないから講演に行きました。全国を回って、講演ってなんてオイシイんだろうと思いました。1年で2千万ぐらい稼ぎましたよ。
林:すご~い!
橋田:それを財団の費用にしたんです。3年ぐらいしたときに再放送が始まって、再放送料が入るようになって、今や財団は私よりずっとお金持ちです(笑)。