日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「日本が後れを取っている新型コロナウイルスワクチン接種」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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「実は新型コロナウイルスワクチン、接種していないんですよ……」
新型コロナウイルスワクチンを接種するかどうか迷っている患者さんから、「先生は接種されましたか?」と聞かれることが増えてきた今日この頃。まだワクチンを接種できていないこと、接種する予定もまだはっきりしていないことを伝えると、患者さんは皆、目を丸くして驚かれます。
2月17日から接種後の健康状況調査を行う対象となっている、国立病院機構・地域医療機能推進機構(JCHO)・労働者健康安全機構(労災病院)の病院に勤務する医療従事者を対象に新型コロナウイルスワクチンの接種が開始されているものの、どういう順番で配布がなされているかなど、詳細な情報開示は不十分だと言わざるを得ません。
また、厚生労働省によると「一般の医療従事者の接種は、3月上旬から順次進められています。ワクチンは3月から5月に段階的に供給され、接種が進められる見込みです」とありますが、クリニックに勤務している私がいつ接種を受けられるのか、全く目処が立っていないというのが現状です。
外来診療を行っている現場では、新型コロナウイルス感染症を疑う患者さんが来ない日はほとんどありません。PCR検査を行わない日はないにも関わらず、新型コロナウイルスワクチンをまだ接種できていない中で診療を続けている医療従事者がまだまだたくさんいるのです。
新型コロナウイルスワクチンは、昨年12月8日に英国で開始されたのを皮切りに、世界中で接種が進んでいます。4月3日時点で、157の国や地域でワクチンの接種が始まっており、世界の累計接種回数は5億9698万回を超えています。国別に見ると、米国や中国での接種回数が突出して多く、ついでインドや英国が続いています。