昨シーズンは、インフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行の恐れから、インフルエンザワクチンを初めて接種した、ないしは久しぶりに接種したという方も多かったと思います。なんと、インフルエンザワクチン接種していた人は、新型コロナウイルス感染症を発症しにくく、また重症化しにくかったことが、ミシガン大学医学部のAnna氏らによって先月末に報告されました。
それによると、アメリカのミシガン州で昨年3月から7月中旬までに新型コロナウイルス感染(COVID-19)検査を受けた27,201人を調べたところ、前のインフルエンザシーズン中にインフルエンザワクチンを接種していた人がCOVID-19の検査で陽性となる確率は、インフルエンザワクチンを接種しなかった患者と比較して24%減少したといいます。さらに、COVID-19の検査で陽性となったインフルエンザワクチンを接種していた患者は、入院や人工呼吸器を必要とする可能性が低く、入院期間も短かったといいます。
新型コロナウイルスを克服するには、国民の多くがワクチンを接種し、集団免疫を獲得するしかありません。発症の予防に加え、集団免疫の獲得を目指して世界中でワクチン接種が進む一方で、新型コロナウイルスワクチン接種をしない人たちもいます。
2021年2月11日から3月7日の期間で実施されたカイザーファミリー財団とワシントンポストの調査から、最前線で働くアメリカの医療従事者の48%がまだ新型コロナウイルスワクチンを受けていないことがわかりました。また、ワクチンが未接種の医療従事者の18%がCOVID-19ワクチンの接種を予定していないと回答し、12%はワクチンを接種するかどうかを決めていないといいます。医師として勤務している私の友人も、「接種しないつもりだ」という一人です。
私は1日でも早く接種したいと思っていますが、いつになるかはわかりません。世界では接種がどんどん行われている一方で、ワクチン接種が世界と比べて圧倒的に遅れている日本で、エッセンシャルワーカーへの定期的なPCR検査の実施やPCR検査数の増大を積極的に行わず、感染予防や自粛を強いるだけでの対策を行う横で、聖火リレーを行っているという事実に疑問を感じるのは私だけなのでしょうか。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員