今季は地元仙台に戻り、独りで練習してきた羽生結弦。コーチのブライアン・オーサーとは世界選手権で1年ぶりに再会した。巨匠の目に映った、1年の成長、来季への展望は──。AERA 2021年4月12日号でオーサー氏に独占インタビューした。
【写真】キスアンドクライで得点を聞くブライアン・オーサー氏と羽生結弦選手
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──全日本はパーフェクト演技での優勝。世界選手権に向けてプランはありましたか?
基本的には、全日本選手権までと同じ練習を積み重ねて、という話をしていました。その練習計画が上手くいったわけですし、結弦が自分でペースを掴んでいましたから。
──ストックホルムで、1年ぶりの再会。羽生選手の仕上がりをどう感じましたか?
みなさんが見ていたように、練習はとてもいい調子でした。今回8度目の世界選手権になりますが、これまでと変わらず、日ごとに試合に向けて調子を整えていくというステップを踏みました。そして26歳の結弦は、これまでで一番成熟し、安定感があり、ちょっとしたことに動じない自信が溢れていました。独りで練習して自分との対話を続けてきたでしょうから、今まで以上にベテランらしい調整をしていると感じました。旅に出した子が大人になった、というような感慨さえありました。
■この条件下でメダル
──1年ぶりに羽生選手が滑る姿を見て、感じたことは?
結弦は本当に落ち着いていて、ネイサン・チェン(21)や他の選手を意識して焦るようなこともありませんでした。対抗意識が強い時は、得意の4回転を「どうだ!」って跳びあったりするものですが、そんな雰囲気の練習にはなりませんでした。ショートは、結弦が得意な4回転サルコーとトーループでしたから、朝の練習も、6分間練習も、本番も、すべてがいつも通りにオーガナイズされていました。練習が素晴らしかったので私は「オーマイゴッド」を繰り返していただけ。クマのティッシュケースを手すりのいつもの場所に置くことが、私の唯一の準備だった、というくらいです。