感染研はこれまで、コロナ対策の政策決定において、一貫して“主役”を務めてきた。所長の脇田隆字氏は政府の専門家会議(廃止)の座長を務め、現在の分科会でも会長代理に就任。感染研で感染症情報センター長などを歴任したOBの岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長も、専門家会議と分科会でそれぞれ構成員を務め、内閣官房参与にも任命されている。

 彼らは要職に就くばかりではなく、金銭面においても優遇されている。厚労省のホームページで「厚生労働科学研究費補助金等の概要」から、「新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業」を見ると、感染研の研究者に多額の研究費が支払われていることがわかる。

■遺伝情報分野のノウハウが乏しい

 2020年度に研究費が交付された41人のうち、15人が感染研の現役の研究者だ。金額の大きいものは、斎藤智也センター長に2億500万円、鈴木基センター長に1億4610万円、吉田弘主任研究官に6200万円などとなっている。

 変異株の脅威が待ったなしの状況下で、必要な研究費の交付は否定されるべきではないが、それにしても、これほど優遇されながら感染研の動きは鈍すぎるのではないか。先の厚労官僚はその理由をこう話す。

「感染研の職員も公務員なので、民間の研究機関のような競争にさらされていない。最新の論文を読んだり、世界の潮流をウォッチしたりする意欲が乏しい傾向がある。厚労省の職員も、もともと国際的な仕事が多くはありません。本省の職員でも多くは英語ができず、世界的に知られる英医学誌『ランセット』なども読んでいません」

 とはいえ、国民の生命を守るためにも、変異株PCRやシーケンスの機器などは最新のものを調達すべきではないか。

「そうした機器の情報を把握しているかも怪しい。能力不足は隠し切れず、グローバルな流れに乗ることができていません」(厚労官僚)

 今年3月にようやく、大学や民間検査機関と連携してPCRやシーケンスを実施する体制が示された。だが、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう批判する。

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