Ayase:いっぱいいますね。今、自分の音楽を世に提案することのハードルが、低くなったと思います。今までは音楽というと、しっかりお金をかけてレコーディングして、事務所に属して、いろんな人に力を貸してもらってCDをつくり、それを流通に流すというやり方で、それでやっと自分の音楽を聴いてもらえるというパターンでした。ですが今はパソコンで自分で楽曲をつくって、ボーカロイドに歌ってもらえば、ボーカルをレコーディングする必要もないし、それをSNSとか、ユーチューブとかの動画投稿サイトにアップすれば、誰かが見てくれるという時代ですね。
林:ふーん、なるほどねえ。
Ayase:ネットを通じて広がるという意味では、このご時世も拍車をかけてると思うんです。現に僕らの音楽も、自粛の中で多くの人に聴いていただけるようになったので。
林:お二人が出てきたのは、天からの暗示のような気がする。いろんなものが大きく変わるんだというときにあらわれたような気がしてしょうがないです。お二人は昔から親しいのかと思ったら、Ayaseさんが「夜に駆ける」のためにユーチューブを見てボーカルを探しているときに、偶然ikuraさんを見つけたんですって?
Ayase:はい。彼女がSNSにアップしていた動画を見て、「この人いいんじゃないか」と思って声をかけたんです。それがまだほんの1年半ぐらい前の話で。
ikura:私はまだデビューもしてなくて、ギター一本で弾き語りをしてました。渋谷だったり新宿だったり、いろんなところで。
林:ikuraさんの声は一度聴いたら忘れられないような透明感がありますよね。Ayaseさんから声をかけられたときはどうでした?
ikura:「小説を音楽にするって何をするんだろう」と最初は思いました。私はシンガー・ソングライターとして自分で曲をつくってライブをしていたので、ほかの人が曲をつくって、自分はボーカリストとしてだけ参加することに少し葛藤があったんですけど、Ayaseさんの曲をユーチューブとかで聴いたときに、「素晴らしい方だな。これは一緒にやるべきだ」と思ったので、「やります!」って返事をしました。
林:ikuraさんはご自分の楽曲もつくってるわけですよね。それはYOASOBIと並行して発表しようと思ってるんですか。