いろいろと難しい時代になったと思う。

 重たい植木を動かす人を横目に、絶対に手伝ってはいけないと上手にしつけられている若い男性たち。質問をすると「クレーマーかも」と身構えられるような空気。「ご主人様-」と人間ばなれした高い声でサービスする女性オペレーター。なんだかこの国で年を取っていくの、めちゃくちゃ怖い気がしてくるではないか。

 車椅子ユーザーでコラムニストの伊是名夏子さんが、JR職員とのやりとりを記したブログだ。旅行のために30分も前に駅に着き駅員にサポートを求めたが、目的の駅が無人駅でエレベーターがないことからサポートを断られた。1時間にわたって交渉したがらちが明かなかった。結果的には別の駅の駅員たちがサポートして目的の場所にたどり着けた。大きなニュースとして報道されているが、伊是名さんが声をあげたことについて、驚いたことに伊是名さんをクレーマーだと批判する声が少なくなかったのだ

 私の「クレーマー話」と並べるような次元ではないのはわかっている。困難にあえいでいる人、困っている人に対しても冷酷に自己責任を求めるようなこの国の残酷さは、ホラーレベルにまで達していると思う。その上で考えさせられる。なぜ、私たちはこれほどまでに「ルール」に自らの身体を萎縮させ合わせようとするのだろう。過剰に忖度することで誰もが攻撃的になっていくのはなぜなんだろう。その怖さを振るい落としたい気持ちで、改めて伊是名夏子さんへの連帯を表明したいと思う。声をあげる、自分の違和感を伝える、そのことに恐怖を感じなくていいと信じたいから。

 ちなみにエアコンはまだついていない。どうしよう、この夏。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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