「日本でも歯科医なども投与を担えるように検討する動きや、離職した看護師に復職してもらったり、民間の看護師紹介企業が全国の自治体を対象に看護師を手配したりする動きも進んでいますが、それらが実現したとしても人材のすそ野は限られ、米英に比べて見劣り感が否めません」(服部さん)
服部さんらの試算によると、政府が目標に掲げるペースで接種を行うのに必要な要員は、全国で1日当たり医師1.1万人、看護師2.8万人。3大都市圏など多くの人口を抱える都道府県では、医師500人超、看護師1千人超が必要になる。
服部さんは言う。
「これはあくまで高齢者のワクチン接種を12週間で完了する政府目標が前提です。医療体制が逼迫するなか、都市部でワクチン接種を担う医師や看護師を継続的かつ大量に確保するのは困難と言わざるを得ません」
■人手確保が最大の課題
ワクチンの供給不足は次第に解決される見込みだが、供給の安定が見込める今後は注射を打てる人材の確保が最大の課題になる、というわけだ。しかも第4波と重なれば、高齢者の接種の進捗は大幅に遅れる可能性も否定できない。
国内自治体の準備状況などを踏まえた服部さんらの試算では、ワクチンの接種ペースは5月中旬に週間300万~400万回に達し、その後、このペースが維持されるという。これは現在のフランス、イタリア、ドイツと同等の水準だ。
このペースを続けた場合、日本で65歳以上の高齢者が完了する時期は9~10月頃。集団免疫獲得の目安とされる全人口の7割が接種する時期は来年3~6月頃になる見通しだという。
そうなると、ワクチンの普及が間に合わない中で、第4波を乗り越えなければならないのは確実だ。そんななか、7月に東京五輪・パラリンピックが開催されることになれば影響ははかりしれない。
国内で新型コロナに感染して亡くなった人は、第3波の昨年11月以降で7400人を超え、死者全体の8割を占める。高齢者施設での集団感染が第2波までの5倍に増え、医療機関では3倍に増えた。第4波の死者数は第3波を上回るのでは、と服部さんは懸念を深める。
「感染率が高く、重症化しやすい英国型変異株が関西だけでなく、首都圏でも拡大しつつあることも死亡者が増える要因になり得ます」
ただ、介護施設などでの高齢者の集団接種が進めば、施設内でのクラスターの発生は第3波よりも抑えられる可能性はある。
「それが唯一の希望です」(服部さん)
※【早期収束にはワクチン「高齢者と現役世代の並行接種」の検討必要 専門家が指摘】へ続く
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年4月26日号より抜粋