新型コロナ収束の切り札とされるワクチン。接種が緒に就いたばかりの日本では 人材不足も予想され、第4波でさらに死者数が膨らむ懸念もある。AERA 2021年4月26日号の記事を紹介。
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新型コロナワクチンの高齢者向け接種が4月12日から始まった。日本のワクチン接種は緒に就いたばかりだが、欧米先進国では先行して接種が進む。みずほリサーチ&テクノロジーズが作成した人口100人当たりの週間の接種回数を見れば、その差は一目瞭然だ。
服部直樹・上席主任エコノミストはこう解説する。
「ワクチン生産国の英米などを中心に、資金力のある欧米の主要先進国で接種ペースの速さが目立ちます」
ダントツの接種率を誇るのがイスラエルだ。すでに国民の62%が少なくとも1回の接種を終えており、集団免疫獲得の目安とされる接種率7割が目前に迫る。ワクチンの普及が進んだことで、今では接種ペースが徐々に減速する段階に入っている。
■日本のペースは底ばい
突出したペースで接種が進むのは米英だ。人口100人当たりの週間の接種回数はピーク時で6回前後。国民の接種率(1回接種を含む)は英国が47%、米国が36%に及ぶ。米英に次ぐペースで接種が進むフランス、イタリア、ドイツなどが3回前後なのに対し、日本は0.3回と「底ばい」の状況だ。
米英と日本の違いは何といってもワクチンの供給量の差だ。加えて、明暗を分ける要素は接種体制だという。
日本ではワクチンの注射を打てるのは医師と看護師に限られている。人口当たりの医師・看護師の数で日本は米英と比べて遜色ない水準だが、米英では薬剤師でも可能なほか、要員拡大に積極的に取り組んでいる。
例えば米国。過去5年以内に免許を失効した医師や看護師にも投与を認めたり、一部の州では医学生や看護学生、歯科医、救急隊員にも投与を認めたりする法改正が行われた。英国では慈善団体がワクチン投与を行うボランティアに研修を実施している。応募資格に医療経験は不問で、高校卒業程度の学力などがあれば志願が可能という。