在りし日のチャーリー浜さん(C)朝日新聞社
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「~じゃ、あ~りませんか」

 こんなギャグで人気だった吉本新喜劇のベテラン俳優、チャーリー浜(本名・西岡正雄)さんが4月18日に大阪市内の病院で亡くなった。

 チャーリーさんは1991年に「新語・流行語大賞」の年間大賞、92年には上方お笑い大賞を受賞するなど吉本新喜劇には欠かせないベテランだった。 記者はチャーリーさんには過去、何度も取材をさせて頂き、食事をともにすることもあった。

 CMで有名になる前は、気軽に居酒屋などに誘ってくれ、ギャグの発想、ネタの仕込みなど芸談から、社会問題や吉本新喜劇の内輪話までざっくばらんに話してくれた。

「ギャラより高い交通費って会社で言われとる。ほんまに昔、地方で仕事もらって行ったんです。帰ってきてギャラもらったら1万円もない。交通費はその2倍、3倍やった」

 チャーリーさん自身が居酒屋で「ここでこんな笑わせたら、吉本の舞台に来てもらえないな」と苦笑いするほど、大爆笑になったものだ。

 CMで人気が出てからは、超多忙となり、「今、電話で5分話す時間もないねん」というほど売れっ子となった。

 ある時、吉本興業のOKをもらって、取材をしたことがある。だが、カメラマンのミスで、思ったような写真が撮影できなかった。

 締め切りまで、あと1日しかない。吉本興業の劇場でチャーリーさんを捕まえて、事情を説明したところ、「仕方ないじゃあーりませんか」と言いながら、後のスケジュールを2時間ほどずらしてくれ、写真撮影に応じてくれた。

 その際も、「ここは別の雑誌が撮影したから、ちょっと離れたところに行ってみましょう」

「先日の写真は缶コーヒーだったので、違ったのがいいか。そう、せんべい、それかじるわ」

 自らがプロデューサーのように、写真のカットまでわざわざ絵作りしてくれたチャーリーさん。カメラマンはひたすら恐縮して撮影した。

 その後、人気が落ち着いてから何度も食事に誘ってくれた。どの店でも「あーりませんかやってよ」とせがまれると、必ず、1度、2度とギャグを披露。写真撮影を求められ、勘定を支払って30分以上かかっても1人ずつ丁寧に対応していたチャーリーさん。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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チャーリ―浜さんが見せた芸人魂