では、腰痛をもたらす危険な病気には、どんなものがあるのか。消化器内科や老年内科、緩和ケアを専門とする鈴木内科医院(東京都大田区)の院長、鈴木央医師に話を聞いた。
特に重大な病気と鈴木医師が考えるのが、腎がんと膵(すい)がん。いずれも有用ながん検診がない。別の病気の画像検査で偶然見つかることもあるが、多くは症状がきっかけで発見される。
「腎がんの特徴的な症状は血尿ですが、弱くて慢性的な腰痛を伴うことがままあります」
と鈴木医師。ちなみに、血尿というと真っ赤な尿のイメージがあるが、血液の量が少ないとピンク色だったり茶色だったりすることもある。食事などの影響も受けやすいが、いつもと違う濃い色の尿が出たら、注意が必要だ。
なお、同じく血尿で発見される膀胱(ぼうこう)がんは腰が痛くなることはほぼないという。
膵がんは無症状のことも多いが、腰や背中の痛みが強く表れることもある。安静時も腰痛や背部痛が続き、胃もたれや胃痛、体重減少があれば、早めの受診が必要だ。
がん以外で鈴木医師が挙げるのが、慢性膵炎と腎盂(じんう)腎炎だ。
慢性膵炎とは、消化酵素を分泌する膵臓が、その消化酵素で自身の組織を溶かすことで生じる。原因は過度な飲酒(特に食事を取らずに飲酒するケース)と、胆石だ。病気は慢性的に進行するが、何らかのきっかけで急に進行する急性増悪(ぞうあく)という状態に陥ると、全身に炎症が広がり、命に危険が及ぶ。
「腎盂腎炎は、主に大腸菌の感染で起こる感染症で、体質なども関係します。尿路結石を併発すると、菌が全身に回って菌血症を起こす危険があります」(鈴木医師)
このほか、急に激烈な腰痛、背部痛に襲われるのが、腹部大動脈瘤の破裂、腹部大動脈解離、胆石、尿管結石など。この場合は待ったなしで救急車を呼ぶ。あるいは病院を受診すること。
内臓系だけでなく、整形外科の領域でもやはり危険な腰痛がある。その一つが冒頭で紹介した化膿性脊椎炎。実はこの病気の発症のきっかけとなるのが、意外な出来事だ。