LiSA:自分はロックだけができると思っていたんですけど、アニメと出会って、可能性が広がりました。たとえば、「Angel Beats!」という作品は、私が一番避けてきた“かわいい”という表現を求められた。自分の中にあったプライドは取り払って、「できることをやってみよう!」と向き合う中で、表現を広げることができたと思います。それまでは、キーが高くてスピード感がある曲を歌うということを特別得意とも思ってなかったんですけど、アニメソングに出会って、そんな自分の特性にも気づけました。

──10年はあっという間だった。振り返るとさまざまな苦悩が今の自分を作ってくれたと感じる。

LiSA:14年に初めて日本武道館でライブをやったとき、体調があまりよくなかったんです。それまで「完璧なLiSA」であることに美学を感じていたので、すごく悩みましたが、結局、「それも自分だな」と。そこでちゃんと体力をつけて、翌年、武道館2DAYSを成功させました。でも、デビュー時に決めた目標が武道館だったので、「この後どこに向かえばいいんだっけ?」という迷いも生まれて。

 その次の壁は周りからの「LiSA、紅白行くんじゃない?」という期待だったかな。19年に初出場できるまでの数年は、応援してくれる人に対して申し訳ない気持ちが常にありました。

 今もいろいろな悩みがあります。「紅蓮華(ぐれんげ)」「炎(ほむら)」という、ものすごく多くの方に受け入れてもらった楽曲のあと、自分がどう生きていくのかも。でも、これからも悩んだり泣いたりしながら、大好きな人と、大好きな音楽で遊び続けたいですね。目の前のことに誠実に向き合って、「今一番にやりたいことを、好きなようにやっていく!」をやり続けたい。「今日もいい日だっ!」と言い続けて、自分に花丸をつけながら。

(ライター・大道絵里子)

AERA 2021年4月26日号

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