宇多丸:ですよね。たとえば、ある命題に対して、世に出す価値のある表現にしようと、石岡さんは最適解よりさらに上を求めるわけですけど、そのときに、自分だけでどうこうするというよりは、いろんな人とのやりとりの中から答えを見つけていこうとしますよね。そこは感覚としていまっぽいところだと思うし、共感するというか。僕もそういうタイプなので。

河尻:その共感ポイントは気になります。昨年出版された『KING OF STAGE~ライムスターのライブ哲学~』にも書かれてましたが、宇多丸さんたちのコラボレーションというのは、どんなふうに?

宇多丸:一番実感するのは、曲のアイディアとかを練ってるとき、自分ひとりでぐじぐじやっているよりは、それこそメンバーと酒でも飲みながら、「最近、何考えてんの」みたいなところから話していったほうがいいんですよ、絶対。「最近どうよ。何考えてんの」とか、「最近どういうことに怒ってんの」とか。

 先の見えない会話ぐらい、脳を使うことってないじゃないですか。それこそ、脳が活性化されるというか。そうした会話の中から、思ってたことってこれじゃない?みたいな、アイディアのかけらが見つかったりする。

河尻:そういう時間は大事ですね。“雑談”は瑛子さんもお好きでした。瑛子さんだけでなく、いい仕事をしているクリエイターの人って、皆さん、いい意味での無駄話を大事にしてる気がします。

 これはパラドックスですね。効率よく正解を探しにいこうとすると、ありきたりの正解にしか辿り着けなかったりするものですけど、不効率にも思える雑談から思いもよらないスーパーソリューションが見つかることはよくあることで、すごい人ほど無駄の活かし方を知ってるというか。

宇多丸:最初から正解が見えていて、これをやりましょうというのは、「これ」が出せている時点で、たかが知れすぎているでしょう。これを100点でつくったところで、石岡さんとか、その退屈さ、つまらなさに耐えられないと思うよね。

 やっぱり、これじゃない、これじゃない、これじゃない――っていう過程を繰り返して突きつめていく中から、何かしら輪郭を見つけていくということが、自分の一歩先に進むために必要なプロセスなんでしょうね。

河尻:これをやらなきゃ、みたいな義務感から入ってしまうと、なかなかいいアイディアは出ないというのは、脳の科学的にも判明しはじめているらしいです。

 目の前のタスクをこなすときに働く脳の部位と、アイディアを考えるときに働く脳の部位は違うらしく、シャワーを浴びたり、リラックスしているときにそっちが活発になると、以前私が翻訳したある本に書いてありました(『クリエイティブ・スーパーパワーズ』)。あと、寝ないのもダメだと。

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一番作業が進むのは、朝起きてシャワーとか朝っ風呂浴びているとき