誠品生活日本橋でのトークイベントより
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ライムスター宇多丸さん(右)と河尻亨一さん
ライムスター宇多丸さん(右)と河尻亨一さん

「遅まきながら、石岡瑛子さんのファンになっちゃって」――そう語るのは、結成から30年にわたって日本のラップ音楽シーンをリードしてきた「ライムスター」の宇多丸さん。宇多丸さんは、「彼女の仕事術や生き方には多くのヒントがある」といいます。

 デザイナーとして資生堂の広告から仕事をスタートさせた石岡瑛子さんは、70年代のパルコ文化を牽引、80年代以降はニューヨークへと拠点を移し、映画や舞台、音楽、ミュージカル、サーカス、オリンピックなどのプロジェクトで活躍しました。近頃開催された東京都現代美術館、ギンザ・グラフィック・ギャラリーでの回顧展が大きな話題に。

「ライムスター」のラッパーとして、ラジオパーソナリティとして、境界を超えた活動を展開する宇多丸さんと、評伝『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』の著者・河尻亨一さんが、石岡瑛子ワールドの魅力を語り合います。(※誠品生活日本橋で行われたトークイベントを記事化しています)

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■カッコよくてチャーミング。石岡瑛子が若者たちの心をつかんだ理由

宇多丸:石岡瑛子さんの存在というのは、僕は、映画『ドラキュラ』のアカデミー賞とか、ターセム・シンの『ザ・セル』の衣装などを見て、すごい日本人がいるなあと、その程度の知識だったんです。でも昨年暮れにラジオの番組で、美術ライターの浦島茂世(もよ)さんに東京都現代美術館で行われていた石岡瑛子展を紹介していただいて、実際に展覧会に行ってみたら、完全にノックアウトされたというか。

河尻:多かったようですね、ノックアウトされた方。宇多丸さんがラジオで石岡瑛子展と絡めて評伝もご紹介くださったというのを知って、あとで番組を聞いたんですけど、展示の臨場感まで伝わってくるようなすごく面白いトークで。美術館めぐりがお好きなんですよね?

宇多丸:ライムスターの「47都道府県ツアー」(2019-2020)の途中から美術館めぐりが好きになって、図録を買ったりするのが楽しみで。それで、石岡瑛子展でも併設のショップに行ってみたら、河尻さんの書かれた評伝が平積みになっていたんです。実物の作品を見たあと、そのメイキングともいえるような評伝を読んで、遅まきながら、もう本当にファンになっちゃって。

河尻:展覧会にも、予想以上に、瑛子さんの仕事にリアルタイムで接していない若い世代が詰めかけて、ちょっとした「エイコ・リバイバル」になっていました。

宇多丸:石岡さんご自身のカッコよさもすごく大きいのかなと思います。改めて言うならば、こんなキャリアの人っています? メチャクチャですよね。

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石岡瑛子にはボーダーがない