蒸し暑い梅雨の時期に入り、食品の衛生管理にも気を遣わなければならなくなってきた。賞味期限内だから大丈夫、と思っていても製造過程で菌が混入し、食中毒を起こしたという事例もある。
だが、賞味期限が目安に過ぎないのなら、気になるのは、本当の“デッドライン”。どの家庭でも、賞味期限切れ食品を抱えているはず。食べても大丈夫なのか、ゴミ箱行きなのか、判断する目安はあるのだろうか。特に、納豆やヨーグルトなど、発酵食品は、かなり古くなっても大丈夫では?と思ってしまうが……。
「発酵と腐敗は違います。納豆菌や乳酸菌も生き物なので、なんらかの原因で死滅してしまうことがある。腐敗菌は、食品によっても異なりますが、増殖するときに独特の刺激臭や色素、ガス、ネトという粘り気のある物質を出します。五感を研ぎ澄まし、違和感を感じたら、絶対に口にしないで下さい」(食品衛生が専門の小西良子・麻布大学教授)
食の安全に詳しい有路昌彦・近畿大学准教授は、もっともリスクが大きいのは“家庭の味”だと指摘する。
「ジャムなど、家庭で保存食を作る場合、慣れているからといって、容器や調理器具の滅菌を怠ってはいけません。多くの人が、自分の手が汚いということにあまりにも無自覚です。おにぎりを素手で握るというのは、手の常在菌をなすりつけているようなものですから、長時間持ち歩く場合は、よく手を洗ってラップを巻いて握るなどの工夫が必要でしょう」
有路さんは、ビン詰め食品を取り分ける時はアルコール消毒したスプーンで、調理後は毎回流しを洗い、アルコール消毒するなど、こまめな滅菌を心がけている。
家族や自分の健康のために、良かれと思った選択が食中毒のリスクを高めることも。有路さんによれば、スーパーやコンビニにあふれる「無添加食品」も注意が必要だという。
「合成保存料や化学調味料は健康によくない、と敬遠されがちですが、無添加食品は、適切に保存料を使っている食品よりも早く腐敗するため、食中毒の危険だけでなく、廃棄率も高いのです」(有路さん)
※AERA 2013年6月3日号