「3冠王を取る人は三振が少ない。落合さんは積極的に振るタイプだから空振りはするけど、それを恐れない。また狙い球が違った時には、故意に空振りする時もある。『球を拾う』のがずば抜けてうまいから、追い込まれても自信があったのだろう。それに首位打者は選球眼が良くないと獲れない。落合さんは四球も多かった」

「ブーマーも三振が少なかった。外国人には珍しいタイプだった。ラルフ・ブライアント(近鉄ほか)は、年間100個以上するのが当たり前だったので攻めやすかった。でもブーマーは三振が少ないし、ベースから離れているから内角も攻めにくい。『三振をしないし、内角が攻められない。めんどくさい打者だな』と感じていた。本塁打王以外のタイトルを獲ったのも分かる」

 3冠王を獲る打者は三振が少ないのと同時に、選球眼が良くて四球も多い。松沼が評した通り、3冠王獲得年度の落合は82年(81四球 58三振)、85年(101四球 40三振)、86年(101四球 59三振)。ブーマーは85年(55四球 33三振)だった。ちなみにブライアントが本塁打王を獲った3シーズンは、89年(49本塁打 187三振)、93年(42本塁打 204三振)、94年(35本塁打 153三振)と多くの三振を喫している。

「落合さんは内角をどう使うかがカギだった。外側は見せ球にして内角で勝負する、普通の打者とは逆の配球。ブーマーも基本は内角中心。ただ外国人特有の低めの変化球への弱さはあった。低めのボール球を振らせてカウントを整え、内角真っ直ぐの速い球で打ち取る。シュート系だと少し球速が落ちるので、内角の速い球でつまらせるイメージ。そこを見逃されたら勝算はなかった」

 40年近く前の対戦を今でも鮮明に覚えている。特徴を思い出しながら、楽しそうに対戦をシミュレートしてくれた。歴史に残る打者との痺れるような戦い。投げる者を燃えさせ、投球レベルさえも上げてくれたのが想像できる。「好投手vs強打者」の戦いは記憶と記録に残り、永久に残り続ける。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。

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