■早く承認されれば多くの命を救える

「あと3カ月ぐらい」と言われていた父は、その後1年近く生き、13年に亡くなりました。よく頑張ったと思います。最後まで立派でした。

 父の治療には間に合いませんでしたが、光免疫療法は15年からアメリカで治験が始まりました。その費用のほぼ全てを個人出資しました。アントレプレナーは自分が稼いだお金を、世の中の役に立つところに投資していくべきだと思ったのです。

 20年3月、光免疫療法で用いる新薬について、条件付き早期承認制度(条件付きで一部の臨床試験を経ずに薬事承認を受ける制度)を利用して厚生労働省に申請し、同年9月に承認されました。わずか半年の審査期間でしたが、小林先生が光免疫療法の論文を発表してからは10年が経とうとしています。

 とくに治験には膨大な時間と巨額の投資を要します。もちろん重要なプロセスではありますが、治療が受けられるまでのタイムラグや高い治療費につながると、残念ながら治療を受けられずに亡くなる患者さんも出てきてしまいます。この点で、条件付き早期承認制度のさらなる活用を促進することが、今後の医療界にとって極めて重要だと考えています。

 がん治療は今、すさまじい勢いで進化しています。すべてのがんを克服できるとはまだ言えませんが、このスピードで研究が進化し、承認が進んでいけば、多くの方が早期にがんを発見し、治療できるようになる。私はそれに懸けたいと思っています。

■三木谷浩史(みきたに・ひろし)
楽天メディカル社会長兼CEO。楽天代表取締役会長兼社長、楽天メディカルジャパン代表取締役会長。アスピリアン・セラピューティクス社に出資し、2019年、社名を楽天メディカル社に変更。同社は「がん克服。生きる。」をミッションに掲げる。

(文/白石圭)

※『手術数でわかる いい病院2021』より

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