かつての女子サッカー界では、30歳を待たずに引退する選手がほとんど。それでも川澄奈穂美(米女子リーグ・ゴッサムFC)は「厳しい環境が可能性を摘んでいただけで、30代でプレーをするのは普通のこと」と語っていた。これは2015年時点でのコメントだったが、彼女自身をはじめ、2011年の優勝メンバーの三分の二が現役を続けていることを考えると、正確な分析だったと言えるだろう。

 世界一を決定するPKを決めた谷紗希は、なでしこジャパンのキャプテンを務めている。世界有数のビッグクラブ、オリンピック・リヨン(今季限りでのリヨンからの退団が決定)の一員として、女子チャンピオンズリーグなど、多くのタイトルを手にしている。岩渕真奈は、アストン・ヴィラで、海外再挑戦を始めている。

 欧州、オーストラリア、日本では男子チームにも所属した永里優季は、アメリカへ戻って新設チーム、レーシング・ルイビルの一員となった。永里と同時期にドイツでプレーしていた安藤梢は、古巣へ復帰し、昨季の優勝にも大きく貢献。プレシーズンマッチから元気な姿を見せており、三菱重工浦和レッズレディースの頼れる切り札として、今季も機能しそうだ。

 ブンデスリーガのピッチに立ち、現在は、韓国の慶州韓国水力原子力FCにいる田中明日菜や、フランス、アメリカでプレーした宇津木瑠美たちにも、それぞれの国で得た知見を、いずれはWEリーグで生かしてほしい。

 日テレ・東京ヴェルディベレーザの岩清水梓は、結婚、出産を経て、現役生活を続行。先日行われたWEリーグのプレシーズンマッチで、ピッチへ復帰した。アルビレックス新潟レディースの上尾野辺めぐみ、INAC神戸レオネッサの高瀬愛実も、ひとつのクラブでキャリアを積み、レジェンドとなっている。

 いっぽう、WEリーグに向けて立ち上げられた新規チームで、新たな挑戦を始める選手もいる。大宮アルディージャVENTUSには阪口夢穂、鮫島彩が、サンフレッチェ広島レジーナには福元美穂、近賀ゆかりが加入した。戦力としてはもちろんのこと、チームを取り巻く周囲の人々へ、女子サッカーのわかりやすいアイコンとして機能している。

 道なきところへ道を切り開き、世界の頂点へたどり着いた2011年の優勝メンバーたち。その開拓者魂は、新時代を迎える女子サッカー界で、これからも輝きを放ってくれるだろう。(文・西森彰)

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