「闘魂ビンタ」を封印し、参院選で維新とタッグを組む猪木氏 (c)朝日新聞社 @@写禁
「闘魂ビンタ」を封印し、参院選で維新とタッグを組む猪木氏 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 7月4日公示とされる参院選で日本維新の会とタッグを組むアントニオ猪木氏(70)が、6月6日、東京・渋谷で初の街頭演説を行った。ハチ公前は、街頭演説を聞く人が集まっているものの、普段とそれほど変わらない雰囲気だ。そんな中、赤いマフラーを首にかけた猪木氏が登壇した。マイクを握っての第一声は、いつものように「元気ですかーっ!」。だが、反応はやや薄い。

 猪木氏が1989年の参院選で史上初のプロレスラー国会議員となってから、「初代タイガーマスク」佐山聡氏(55)、「平成の格闘王」高田延彦氏(51)など、多くのプロレスラーが選挙に立候補した。中でも、馳浩氏(52)、大仁田厚氏(55)、神取忍氏(48)の3人は、猪木氏のあとに続いて国会議員となった。ザ・グレート・サスケ氏(43)のように、地方議員を含めれば、決して少なくないプロレスラーが政治家になっている。

 ひょっとして、プロレスラーって政治家に向いているのだろうか? 「週刊プロレス」元編集長のターザン山本さん(67)に聞いた。「プロレスラーは目立ってナンボ。どういうことを言えばマスコミ、聴衆の気を引けるか、よく知っています。今は無党派層が多い。だから選挙は、どれだけ無関心な人たちのハートをつかむかじゃないですか。その点、プロレスラーは政治家向き。他の人は勝てませんよ」。

 たしかに、「元気ですかーっ!」「闘魂ビンタ」「1、2、3、ダァー!」という猪木氏の「三種の神器」は、プロレスに関心のない人でも知っている。

 そして、猪木氏と日本維新の会の相性は抜群に良いのだともいう。「石原(慎太郎)さんも橋下さんも猪木さんも、プロレスで言えばメーンイベンター。それに、ただ試合をするだけでなく、常に話題を提供する。僕に言わせれば、橋下さんの言動は完全にプロレス的パフォーマンスですよ。もう天才的。言葉で観客とマスコミを巻き込んで、賛否両論があってもどんどん突っ走る。でも最近は、あまり受けず、たたかれてしまってますけど……」。

 かつて、プロレス界は、全日本プロレスと新日本プロレスの2大団体だったが、今では大小さまざまな団体が群雄割拠する。かたや政界も、自民と民主の2大政党から多くの政党に分かれ、共闘分裂を繰り返す。プロレスが政治に近づいたのか、政治がプロレス化したのか……。

週刊朝日 2013年6月21日号