雪松の餃子はキャベツを中心とした野菜餃子で、豚肉をわずかに含む。モチモチ食感の皮、野菜の甘み、しっかり下味が付いた餡が特徴だ。高野内さんらは試行錯誤を繰り返し、約2年間かけて本家の味を再現。店主の松井さんから「これなら一緒だよ。俺はもう餃子を作るのを辞めてこれを仕入れる」とお墨付きを得たと言う。松井さんは昨年、残念ながら77歳で亡くなった。
「『雪松』の餃子のレシピは預かりものなので、この味1点勝負で守っていこうと決めています」(高野内さん)
2018年9月、第1号の入間店(埼玉県)をオープンした。商品は36個入りの冷凍餃子1000円(税込)のみ。タレも別売りしているが、「一口目は何もつけずに食べてほしい」(高野内さん)という自信作だ。開店当初から周辺に車の渋滞ができるほど盛況だった。
「車の渋滞ができた時に、群馬の『雪松』に苦情の電話がいってしまって、しばしば迷惑をかけたことがありました。三代目は『餃子ごときでつべこべ言うな』と電話に対応していたようです(笑)」
その後、着々と店舗数を増やしていき、2019年7月に12店舗目の大泉学園前店(東京都練馬区)で初めて、無人販売を試みた。「伝説の餃子をできるだけ手軽に多くの人に届けたい」という思いから、売り方にも検討が重ねられた。
「はじめは自動販売機やセルフレジも検証して、機器メーカーと何度か商談したこともありました。しかしどれもなんだか使いにくい。コンビニでもセルフレジが空いていても人がいるレジに並ぶ光景があるように、まだ根づいていないのではないかと思いました。そこで目をつけたのが、伝統的な販売手法である野菜の直売所でした」
心配だったのは商品が盗難に遭うこと。そこで料金箱にひと工夫をしたという。
「料金箱を神社のお賽銭入れみたいにしています。ちょっとした遊び心なんですが、これで悪いことができないのではないかな、と思ったからです。慣れた方だと30秒で購入していかれますね」