“女性の聖域”だった保育の現場で男性が働き始めたのは1970年代初めごろ。最近では男性保育士も少しずつ増えてきた。しかし保護者からの偏見、劣悪な待遇など、男性の少ない業界ならではの問題もある。

 名古屋市内の民間保育園に勤務するCさん(34)は、数年前、女子園児の保護者から直接、「この子はよくおしっこもらすけど、先生はこの子のオムツ替えんといてぇ」と言われた。理由は「男」だったからだ。

「男性は困る」という理由で、乳児(3歳未満)専門の保育園の園長から暗に入社を断られたこともあるという。

「国家資格の専門職なのに、同じ国家資格の医師や弁護士と比べてあまりにも社会的認知が低いです」

 男性保育士の悩みは、設備面にも及ぶ。園内に、男性用トイレや更衣室すらないケースが多いのだ。着替える時は休憩室の扉に「いま着替え中」と書いた張り紙を張ったり、園内の廊下の一角に畳を敷いてカーテンで仕切り、着替えをするという男性保育士もいた。女性に更衣室がなかったりすれば、明らかなセクハラだ。予算に余裕がないという台所事情もあるが、「せめて更衣室ぐらいほしい」と男性保育士たちは口をそろえる。

次のページ