第1波のころは、院内に感染対策チームを組織し、毎週コロナ対策会議を開いた。各部門の部長が集まって、その都度、さまざまな連絡や対策の協議をおこなっていたという。
現在は、かなり診療体制が安定してきたため、コロナ対策会議は2週間に1度の招集となっている。同院にはコロナ専門病棟が5床ある。透析患者や、循環器疾患のある重症患者には対応しているが、それ以外は公立病院に対応してもらっているという。
その後、PCR検査も普及し、検査をおこない陰性を確認した後、できるだけ速やかに手術をおこなうという体制が整ってきて、20年12月頃には治療数が戻り始めたという。
コロナ禍でのペースメーカー治療のリスクは、治療そのものというよりは、患者はもとより医療スタッフや治療に立ち会うデバイス企業のスタッフなどによる感染波及だ。同様に、デバイスを植え込んだ患者も、来院による感染リスクがある。
心臓病はコロナ重症化を引き起こす病気のため、今後も慎重に対応することは重要だ。コロナ禍の病院受診控えが原因で、この1年余りで健康診断を受ける人が減り、心臓疾患が放置されたままになっている人が増えていることが懸念される。
「特に慢性化して症状がなくなっている心房細動の人は、治療が遅れてしまうと治りにくくなりますし、脳梗塞発症の恐れもありますので心配です」
そんななか、最先端の病院では、「遠隔モニタリングシステム」が普及している。遠隔モニタリングとは、患者に植え込んだ、「ICD(植え込み型除細動器)」「CRT-D(両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器)といった植え込み型デバイスの情報を電話回線や携帯電話を通じて自動送信するシステムだ。
患者はモニターという送信機に植え込み型デバイスの情報を取り込み、そのモニターを自宅で電話回線や携帯電話とつなぐと、植え込み型デバイスの情報や心臓の状態が、専用のデータベースに送られ、医師はその情報をインターネットを通じて入手し、患者の状態に応じて早期に診療対応ができる。これにより、患者は経過観察のために病院に通院する必要がなくなる。
「遠隔モニタリングシステムは、当院ではかなり以前から導入していました。しかし、患者さんは高齢者が多いため、ネット環境などを使いこなすのが難しく、普及のスピードは一般的には遅かったです。しかし、今回のコロナを機に普及が進むでしょう。当院は診療も九十数%はオンラインに変わっています。術後経過をある程度みたら、その後は1年に1度来院してもらい、あとは全て遠隔診療で対応しています」
このように、直接受診せずとも、病状を管理してもらえる遠隔モニタリングを実施している病院にかかることが、とくにこのコロナ禍においては安心と言えるだろう。
(文/伊波達也)