心臓の病気は、緊急を要する治療も多い。新型コロナウイルス感染症の流行拡大があっても、治療の遅延は許されないケースも多いはずだ。そのような状況下、手術数トップの病院はどのような対応をおこなってきたのだろうか。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』でペースメーカー治療が全国1位となった小倉記念病院の副院長で循環器内科主任部長である安藤献児医師に話を聞いた。
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脈が遅くなる、または速くなる、不規則になる状態を不整脈といい、症状によって病気の種類や治療が異なる。不整脈の中でも「心室頻拍」、「心室細動」といった緊急を要する心臓発作に対する治療として、「植え込み型デバイス」という機器を体内に植え込む必要がある。デバイスを体内に植え込む治療を総称して、本誌ではペースメーカー治療と呼ぶ。
ペースメーカー治療については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイト「手術数でわかるいい病院」で無料公開しているので参考にしてほしい。https://dot.asahi.com/goodhospital/
コロナ禍の医療現場の状況は厳しいものだったことが推察される。2020年の第1波のころ、小倉記念病院の場合は、どのような状況だったのか。安藤医師はこう述べる。
「第1波の緊急事態宣言のころは、学会からも緊急以外の手術を止めるようにとの要請がありました。当院は開業医の先生方からの紹介で手術もしていますが、患者さんの受診控えもあり、予定する手術は減りました。4~8月で、おそらく4割減だと思います」
心臓疾患で特に問題だったのは、救急搬送されてきた場合にコロナを合併している患者もいる可能性があることだった。
「そういう場合、どう対応するのか。たとえば、防護服の着方や緊急治療の手順などのシミュレーションにもかなり時間がかかりました。ペースメーカー治療に関しても、当初はウイルスの感染力などがよくわかっていなかったため慎重になり、手術をおこなうまでかなり時間がかかりました。また、すでに植え込んでいる人のペースメーカーのチェックなどは状況に応じて延期しました。半年くらい延ばした患者さんもいました」