職場のストレスなどにより起こる6月病。症状が深まるにつれ、患者は自己否定感を深めるという(撮影/写真部・慎芝賢)
職場のストレスなどにより起こる6月病。症状が深まるにつれ、患者は自己否定感を深めるという(撮影/写真部・慎芝賢)
この記事の写真をすべて見る

 心の病として有名な5月病だが、最近ではその一カ月あとに訪れる、「6月病」なるものも増えているという。

この春、IT関連の同業他社に転職した、都内に住むエンジニア女性Aさん(32)は、6月に入り不調を感じるようになった。

 以前と比べて食欲がわかない。終電で疲れて帰ったのに布団に入っても午前3時まで寝付けない。平均睡眠時間は5時間未満。朝起きるのがつらくなり、出勤時には軽い腹痛や吐き気も。

 でも頑張らないと。経験を買われて、今では前職場の1.2倍の仕事を任されている。上司や先輩に「できません」とは口が裂けても言えない。ただ自分は次の夏季休暇まで心と体がもつだろうか──。

 Aさんの症状はもしかすると「6月病」かもしれない。「5月病」ならぬ「6月病」。大学の新入生が環境の変化になじめずゴールデンウイーク明けから授業を休みがちになる「5月病」に対し、研修を終え現場に配属された新入社員が職場のプレッシャーと梅雨時の天候不順で体調を崩し、休みがちになる「6月病」はいま、中堅、中高年社員にまで及ぶという。

「顕著になったのはリーマン・ショック後からでしょう」と話すのは2009年に書籍『職場不適応症』を監修し、職場のストレス疾患に詳しい日本大学医学部精神医学系の渡辺登教授。

 6月病は医学的には「適応障害」に当たる。脳の機能的な疾患であるうつ病が薬物療法中心なのに対し、適応障害はストレスによって引き起こされるため、カウンセリングが中心だ。

 主な症状は食欲不振、寝付けない、会社に近づくにつれ気分が悪くなるなど。ストレスを紛らわそうと暴飲暴食に走るケースもある。会社を遅刻しがちになり、出勤できなくなることも。年々、職場負担が増す中で、新人だけでなく、不慣れな職種に異動させられた中堅社員や転職者が無理を重ね、5月下旬から6月にかけて受診するケースがここ数年、増えているという。

AERA 2013年6月24日号