SNSやサブスクリプションサービスなどのアカウントは、死後なにもしなければ永久にネットに残ったままだ。こうした「デジタル遺品」をどのように処理すればいいのか。万が一に備える制度について、現在発売中の『定年後からのお金と暮らし2021』(朝日新聞出版)から紹介する。
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終活は何から手をつければよいのだろう。三井住友信託銀行財務コンサルタントの黒沢克美さんは「一度に取り組もうと思わず、まずは身の回りから少しずつ始めてはいかがでしょうか。たとえば通帳や年金手帳、証券など重要なものを一つの箱にまとめることから始める人もいます」と言う。
どこから取りかかるにせよ、まずすべきは家財整理。一人暮らしでも家族との同居であっても、故人の身の回りのものは誰かが片付けなくてはいけない。「もう少し整理しておいてくれれば」と嘆く遺族は少なくない。片付けには想像以上に体力も気力も必要だ。まだまだ早いと思っていても、心身とも元気なうちに時間を見つけて始めよう。生活環境が変わる定年は、一つのよいきっかけになるだろう。
まずは「必要なもの」と「不要なもの」に分け、不要なものは「捨てる」「売る」に分類して処分を進める。一戸建てからマンションへ、あるいは高齢者施設へと、住みかをコンパクトにすることを前提に断捨離をするのも一案だ。
「必要なもの」のうち、着物やアクセサリーなど、価値や愛着のあるものは形見分けとして誰に譲るかを決めておく。ただし、高価なものは「財産」として遺産分割の対象となる可能性があるため、遺言に残しておくのがいいだろう。
■放っておくと厄介なデジタル遺品
現代ならではの問題が、インスタグラムやフェイスブックといったインターネット上のデータの処理だ。どこかで消さなければ永遠に閲覧できる状態で残ってしまう。「デジタル遺品」と呼ばれるこうしたデータ処理に加え、ネット上で契約したサブスクリプション(定額制サービス)の解約も必須だ。こうした処理を誰かに任せるには、パソコン、スマホのロックを解除するためのパスワードや、SNSのログインのためのIDとパスワードなどをわかるよう書き留めておく必要がある。ただし、誰もがわかる場所に置いていては、なりすましや預金の引き出しなどに利用される危険があるので、特定の人にだけ伝わる工夫を考えたい。
また、この機会に一度、自分の口座から定期的に引き落とされている項目をチェックし、不要と思われるものを整理しておくのもおすすめ。複数のクレジットカードを持っている場合には、どれか一枚に一本化することも考えよう。