イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 私はこれらの事実を番組内で指摘したのだが、遅きに失したのである。

 ともかく、マスコミの多くは森氏をだめな首相だと決めつけることにした。その意味では森氏はマスコミの犠牲者であった。

 だが、森氏はその後も自民党議員たちや、保守系の国民から非常に信頼されている。

 21年5月、6月の時点の世論調査で、7割近くが東京五輪開催の中止、再延期を求めていたが、東京五輪は大成功であった。

 これは東京五輪組織委員会会長であった森氏の存在が大きいはずだ。ともかく森氏は関係者たちの面倒見がよく、誰もが森氏を信頼しているからである。

 この10年近く、自民党を仕切っていたのは安倍元首相であった。安倍内閣は7年8カ月続き、歴代最長となったが、首相を辞任してからも事実上自民党を仕切っていた。

 去年7月に、その安倍氏が銃撃によって殺害され、自民党はバラバラになると思われていたが、それでも何とかまとまっているのは、森氏の存在があるためだ、と私は捉えている。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2023年2月10日号

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