「『昭和生まれが、チョッキやジーパン、ズボンと言って何が悪い!』(笑)。どちらかといえば女性はオバサン認定されないか気になる場合があるかもしれませんが、無理して若者っぽい言い方をするほうが、かえって浮いてしまう可能性も高いです。むしろ、今の若い世代も憧れる往時の音楽や銀幕のスターのファッションとからめて話せばウケることもあるでしょう」
西川氏は、昨今の世情が後押しする日本語への回帰も指摘する。
「平成から令和になり、日本の伝統的な言葉や知る人ぞ知る地産地消の産品を再発見することが老若男女に広がっています。食品では『塩麹』が注目され、『スイートポテト』というより『紅さつま』と日本語で芋の品種を記したほうがおいしそうに感じる時代です。デニムも『インディゴ』で染めたというより『藍染め』のほうが新鮮です。新型コロナの影響で海外との往来が激減する中、和への回帰はさらに進むでしょう」
ファッション用語も、カタカナ言葉の言い換えで、日本的な響きの言葉が復権する可能性があるという。
「『スーツ』より『背広』、『ドット柄』と言うより『水玉模様』、さらに古い『水玉文様』と記したほうが重みが増し、大人の文化の薫りがするにちがいありません」
前出の都子さんもこう言っていた。
「おしゃれな人、センスある人が『背広』や『水玉』と言うと、丁寧な雰囲気も出て、古い言葉をあえて使っているんだろうな、素敵だなと感じます」
「コール天のズボンに、チョッキとズックを合わせてみました」とか、あえて言ってみるか。
(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2021年6月11日号