もちろん、長女を育てるのは、きれいごとだけではありません。首の座らない150cmの身体を、赤ちゃんのように横抱きにしてお風呂に入れるのはかなりの体力が必要ですし、夜中に何度も人工呼吸器のアラームが鳴って寝不足が続くと、レスパイトケア(※病院などが、家族が行っている介護や育児を一時的に代替してリフレッシュしてもらうケアやサービスのこと)など休息できる環境がなければ、メンタルに響きます。
でも、それ以上に、家族は長女の笑顔に癒され、この子がいてくれることがとてもうれしいのです。特に、現在、思春期真っ只中の双子の次女は、他の家族には素気なくても、たびたび長女が寝ているマットに横になり、ギューッとハグをしている姿を見かけます。
実はこれを書いている今日(2021年5月下旬)は、娘たちの15歳のお誕生日です。
■「生きていたらかわいそう」と思った日もある
長女の病気や合併症が次々と見つかった0歳児の頃、私は絶望の中で主治医のター先生に、この子は生きていたらかわいそうだと言ったことがありました。
でも、その時に返って来たター先生の言葉がとても印象的で、今でも私の中に大きく残っています。
「ゆうちゃんは人の機嫌を伺ったり、愛想笑いをしたりしません。ゆうちゃんが笑っているときは、心から楽しいと思っているときなんですよ」
■「幸せ」の概念が変わった
「幸せ」の価値を、自分の概念を中心に考えていたことに気付きました。そして、この言葉をきっかけに、少しずつ長女の状態を受け入れ、前を向くことができたように思います。
長女は15年経っても、動きも仕種も赤ちゃんのままです。けれども、彼女は誰かに気を遣うことも誰かと揉めることもなく、常にありのままの姿で真っすぐに生きていて、私にはとても幸せそうに見えるのです。
HappyBirthday!! Twin sisters!! 我が家に来てくれて、ありがとう。
〇江利川ちひろ/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ
※AERAオンライン限定記事