東京五輪・パラリンピックの行方は、政界にも影を投げかけている。
最初に「五輪政局」の口火を切ったのは、二階俊博自民党幹事長だ。
二階氏は4月、新型コロナウイルスの感染状況次第で大会は「スパッとやめなきゃいけない」と発言。その言葉はニュースとなり、またたく間に世界に広まった。
これを失言と捉える人もいるが、そう単純な話ではない。なぜなら、コロナ下での大会開催は安倍晋三前首相が主導したからだ。大会組織委員会の幹部は言う。
「もともと森(喜朗・元首相)さんは、昨年3月に安倍さんに大会の2年延期を進言していた。コロナは1年では収まらないとわかっていたから。それを安倍さんが『1年でワクチンはできる』と言って、1年延期で押し切ったんです」
政治ジャーナリストの田中良紹氏は言う。
「二階氏は、大会開催をめぐる今の混乱は安倍氏に責任があると考えているでしょう。おそらく、関係者のほとんどもそう思っている。今、メディアでは菅首相ばかりが批判されていますが、中止になって政治的に最も追い詰められるのは安倍氏です」
そのなかで最近の安倍前首相は、党内での政治活動を活発化させている。先月21日には自民党の半導体戦略推進議員連盟に参加し、麻生太郎財務相とともに最高顧問に就任した。議連の会長は、安倍前首相に近い甘利明税制調査会長だ。自民党内からは「次の人事を見越した政局だ」と見られている。
この動きに二階氏も黙っていない。今月1日には、自民党内で相次ぐ「政治とカネ」の問題について聞かれると「ずいぶんきれいになってきている」と発言し、物議をかもした。ここにも安倍前首相の影がちらつく。前出の田中氏は言う。
「『きれいになった』とは、いつの時代に比べてのことなのか。それは、森友問題や桜を見る会などで批判を浴びた安倍政権が終わったから『きれいになった』と言ったのかもしれない。二階氏の発言は、安倍氏を意識した発言が多い」