ライフプラン情報は「標準家族」向けが多いが、LP研にはゲイ仕様の情報を求めて参加者が集まる(撮影/高井正彦)
ライフプラン情報は「標準家族」向けが多いが、LP研にはゲイ仕様の情報を求めて参加者が集まる(撮影/高井正彦)
この記事の写真をすべて見る

 誰にとっても重要な問題である老後問題。ゲイのカップルにとっては、より深刻な問題となっているようだ。

 その日のテーマは「エルダリーゲイの話を聞く」。63歳で、20歳年上の同性パートナーと40年同居するマサキさんの話を聞こうと、会場は約40人の参加者で埋まった。

 東京・新宿2丁目にある、厚生労働省が男性同性愛者のエイズウイルス(HIV)感染予防啓発のために設置した「コミュニティセンターakta(アクタ)」は、“ゲイの公民館”としてさまざまな催しに活用される。

多くの同性愛者にとって、「年齢が高い(エルダリー)同性愛者」の存在は遠い。同性愛の性的指向をもつ人はどの時代にも一定割合でいるはずだが、時代の制約で、それを自身のライフスタイルとして貫いた人は多くない。若いゲイにとって、先輩のモデルケースがいないのだ。また、結婚制度や子育てという“かすがい”を欠く同性カップルには、40年続くパートナーシップは奇跡のように映る。

会場からはさまざまな質問が飛んだ。83歳と63歳の2人暮らしの日常やお金、住まい、介護のこと、そして万一の時や相続など。長続きの秘訣2人が結んでいる養子縁組についても質問は多かった。

 マサキさんには長いゲイの友人も多い。新宿のゲイバー「タックスノット」の常連たちだ。タックスノットは1982年、作家・美術家の大塚隆史さん(65)が当時のパートナーと始めた。70年代にラジオ番組や書籍でゲイのメッセージを発信した大塚さんのもとに、同世代のゲイたちが集った。

次のページ