A 一般庶民を表す「百姓」がしだいに農民を表すようになった
もともとの読みは「ひゃくせい」です。「姓」は古代の豪族が授けられた「かばね」とよばれる称号のことで、「百」は「たくさん」の意味です。つまり、多くの姓をもつ民を表しました。それが一般人民や庶民を表すようになり、中世以降に農民の意味で定着したといわれています。
Q 町の中心的な通りを「目抜き通り」というのはなぜ?
A 日本刀の「目貫」が元になっている
「目貫」とは、刀の柄の部分に刺さっている釘です。刀身が柄から抜けないように、茎(なかご)という柄の中におさまっている部分と柄を固定しています。室町時代後期以降、この目貫を金銀細工で装飾することが盛んになり、やがて刀でいちばん目立つ部分となりました。そこから、際立って目立つことを「めぬき」というようになり、「目抜き」の字が当てられました。
Q 「管を巻く」の「管」って何?
A 機織りで糸を巻くための管
機織りで管に糸を巻きつける作業を「管巻き」といいます。このとき、「ブーン、ブーン」という音が繰り返されます。それが、酔っぱらいなどが同じ話を繰り返すことと通じるため、とりとめのない話を繰り返すことを「管を巻く」というようになったといわれています。ほかに、「くどい」「わずらわしい」という意味の「くだくだしい」を省略したとする説などもあります。
Q 「派」と「手」で華やかなことを表すのはなぜ?
A もともとは「破手」で、型破りな曲を表していた
現在の「派手」の字は当て字です。もともとは「破手(端手)」と書きました。三味線音楽の一つである三味線組歌で、伝統的な様式のものを「本手組(ほんてぐみ)」といい、その「本手組」の型を破った新しい様式を「破手(端手)組」といいます。江戸時代初期につくられたこの「破手組」の曲がにぎやかで華やかだったことから、他の分野でもにぎやかで華やかなことを「はで」というようになり、のちに「派手」の字が当てられました。
Q 「板につく」の「板」ってどんな板?
A 舞台のこと
この場合の「板」は、板敷きの舞台のことです。新人の役者は舞台で浮足立ってしまうこともあるでしょう。しかし、経験を積むと、役者の芸が舞台にぴったり調和するようになります。そのような状態を「板につく」といい、広く態度や物腰がその地位や立場にふさわしくなることを表すようになりました。
Q 「口裏」ってどう合わせるの?
A もともとは「口占(くちうら)」という占いのこと
古くは、人の言葉を聞いて吉凶を占う「口占」が行われており、『平家物語』の異本の一つとされる『源平盛衰記』にもその様子が描かれています。やがて占いではなく、言い方から本心を察すること、つまり本音と建前を聞き分けることに意味が変わりました。本音は裏側にあるので「口裏」の字になり、表向きの発言が矛盾しないようにしめし合わすことを「口裏を合わせる」というようになりました。
文/美和企画
※『みんなの漢字』2015年1月号から