石ころめっけてきて、傘を逆さに持てば立派なゴルフクラブですよ。通学路がゴルフコース。片道30分、全長2キロ。田舎だから良かったものの、今思えば危ないやな。ブルンブルン振り回してた後ろ髪の長いY君の仇名はもちろん「ジャンボ」。
手持ち無沙汰にまかせて、余所んちの塀や公園のフェンスを傘でガラガラガラガラ引っ掻きながら歩くのも、かなりの迷惑行為ですが子どもには楽しいものでした。「クソガキ、うるせー」って公園に寝泊まりしてるオジサンに怒鳴られて、みんなで走って逃げた後、「どこ行こうかねぇ」と思案しながら、傘の倒れた方向にひたすら歩いていくと、汚い池に突き当たりました。そこにカエルの卵がトグロを巻いていて、バカな一人が「傘に水張って持って帰ろう」って言いだして、タプタプさせつつ恐る恐るみんなで持って帰った大量のカエルの卵。あれ、どうなったんだっけ?
傘一本であんなに楽しめたのに、今、傘とは微妙な関係。今度、雨が降ったら人が見てないところでクルクル回してみようかしら。片手がふさがってもイラつかないくらいの余裕で生きていきたいね。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中
※週刊朝日 2021年7月2日号