「ご自分の意志を貫く精神力のある方。美智子さまがいて、日本は救われたと思います。私としても、これだけ熱を入れて取材し続けられる方に巡り合えて幸せです」
渡邉さんが飛び込んだ当時のマスコミ業界は、女性がほとんどいなかった。あらゆる雑用を引き受け、「女は早く辞めろ」と上司に言われ、ポケットにコンドームを入れられるなど数々の嫌がらせも経験したという。そんな中、苦労も多い皇室でしなやかに自身の道を歩む美智子さまの姿に、励まされていたのだろう。
その美智子さまが陛下(上皇さま)と成し遂げた「最後の大改革」が、生前退位だ。
国民への負担や経費を最小限にするための決断だった。葬儀も400年ぶりに土葬から火葬に変更すると決めた。
どこまでも国民に寄り添おうとする姿に、「美智子さまらしい終活」としみじみ語る。今回の著書には、「一人一人が自分の『死に様』を考えるきっかけになれば」との願いを込めた。
「どう生き、どうこの世から消えたいのかを見つめ、次の世代の理解と賛同を得る。美智子さまの人生の終い方は、後世の大きな学びになると思うのです」
本のタイトルに「未来へ」と添えた真意だ。(本誌・大谷百合絵)
※週刊朝日 2021年7月2日号

