書き言葉で思いを伝えることを仕事にするプロにも話を聞いた。コピーライターの阿部広太郎さんが考える「伝わる言葉」とは「思い出せる言葉」のこと。

「自分が伝えたと思っても、相手に『伝わった』とは限りません。受け手側は日々多くの文章や言葉を目にしています。多数の言葉を受け取っているなかで思い出してもらえる言葉こそが、伝わった言葉だと思っています」

 そのためには予想や「当たり前」を裏切ることだという。

阿部広太郎さんが担当した「ダイアログ・イン・サイレンス」の広告(photo ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ提供)
阿部広太郎さんが担当した「ダイアログ・イン・サイレンス」の広告(photo ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ提供)

「静かに」を意味するジェスチャーである口元に人差し指を立てたイラストに重なる、「おしゃべりしよう。」という言葉。阿部さんが担当したもので、聴覚障害者がアテンドし、ボディーランゲージなどでコミュニケーションをとって言葉の壁を超えた対話を楽しむエンターテインメント「ダイアログ・イン・サイレンス」の広告だ。まさに、予想を裏切る、思い出される言葉と言えるだろう。日々こうした言葉を編む阿部さんは書き言葉の魅力をこう語る。

「会話のような即時性がない分、書き言葉は一語一句に真剣に悩むことができます。どこにスポットを当て、逆に何を削れば魅力的になるかも取捨選択できる。だからこそ書き言葉には多くの可能性があると感じます」

(編集部・川口穣)

AERA 2022年12月12日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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